治療設定について
このオフィス2021年9月に開業いたしました。それまで私はクリニックで精神分析的心理療法(精神療法)の時間を設けさせてもらい、実践を行っていました。オフィスに移行したことで治療設定(構造)は変わったことと変わらないことがあります。そのことも含めて精神分析的心理療法の治療設定について少し書いてみたいと思います。
精神分析・精神分析的心理療法における外的な設定上の共通点は、毎週同じ時間に45-50分を繰り返して年単位で治療することです。精神分析は週4日以上(フロイトは週6行っていました)、精神分析的心理療法では週1~3回と頻度が落ちますが、毎週同じ時間に繰り返しあることは変わりません。
これは、現実的な外的な条件(場所、時間、頻度)を一定にすることで、より無意識的な心の状態を見やすくするためです。一定にすることで、そこでの揺らぎもわかります。また毎週の繰り返しが生活の一部としてなじんでいくことで徐々に立ち現れてくるものがあります。繰り返しによって生活の一部になることはこのようなセラピーの要素のひとつであるため、最低週1回は必要となります。
頻度に関しては多い方がより進展しやすいと言えます。また会わない時間が多いほどひとりで作業する時間は多くなります。セラピー外の出来事に紛れて取り組みたいことになかなか向き合えないことも起きるかもしれません。セラピー自体が生活の中のひとつの刺激のようなものなので、週2回あるとセラピーの場で起きたことについてセラピー内で考えやすくなり、より安定するように思います。
精神分析ではカウチを使った治療となりますが、精神分析的心理療法では椅子による対面(90度)の場合と、カウチを使う場合があります。頻度や病態、希望などから個々に判断をしていくことが多いように思います。当オフィスでは、基本週1回であれば椅子を使っています。週2回以上では、椅子を使う場合とカウチを使う場合があります。
週複数回の治療が可能となったこととカウチでの治療が可能となったことは、クリニックの診察室から個人のオフィスに移ったことでの変化のひとつです。しかし何より大きいのは面接室の空間でしょう。そもそもフロイトの時代から、このような個人開業の場で精神分析は営まれてきた経緯があります。もちろんここでも、精神分析と精神分析的心理療法の違いを考える必要はあるように思います。現代の日本で精神分析的心理療法は、様々な実践の場があります。クリニックや病院で行うこともあれば、このような個人開業の形もあるでしょう。どのような形で行うとしても、その場がどのように治療に影響するかを考えていくことは大切です。現実的な要請とタイミングもありましたが、私が個人開業を選択したことに関しては、この開業という形が私自身の分析的な体験の一つの要素になったことも大きいように思います。
次は訓練について書いてみたいと思います。