精神分析的心理療法

精神分析的心理療法は、精神分析の考えと手法に基づいた人間理解と治療のための方法です。精神分析はジークムント・フロイトが20世紀のはじめに生み出しました。

精神分析・精神分析的心理療法では、特別なやり方で、患者さんと治療者が交流をしていきます。

患者さんは定期的に面接室を訪れ、くつろいだ姿勢で、こころに浮かんできたことを思いつくままに話すことを求められます。それは時に、夢や治療者に向けられる気持ちも含むでしょう。治療者は共に過ごしながら、患者さんが意識・無意識全体で、いま語ろうとしている患者さんのこころについて、耳とこころを傾けます。語られていることだけにではなく、語られていないこと、言い間違え、雰囲気など全体を大切にします。そして、治療者の中に生じた理解をお伝えします。

このような交流を通して、患者さんは知らなかった自分の部分、感情や願望、空想と出会います。そして、自分のこころの生産的で創造的な力を、いかに無意識の思い込み「とらわれ」によって制限してきたかに気づくようになっていきます。このようなことに気づき言葉にしていくことで、こころはより自由になり、それまで抱えきれなかった情緒や葛藤、過去の体験を自分の心の中に納められるようになり、人との関わりや社会との関わりはより安定したものになっていくでしょう。

このようなことに取り組むには、他者の存在が重要とされています。逆説的ですが、ひとは他者と出会うことで、自分を知ることができると言えますし、こころが成長するためには他者のこころが必要と言えます。自分を制限している「とらわれ」から自由になるということは、必然的に見たくないもの、見てはいけないことにしているものを見つめることも含みます。それには、他者の援助がなければ困難です。その道のりは決して平坦ではなく、不安や辛さを感じることもあるでしょう。セラピーを受けるということは、その道を治療者という同行者と共に歩むこととも言えます。紆余曲折しながら進んでいくことになりますので、毎週一定回数、年単位の期間継続することが期待されます。

精神分析は、1回45分ないし50分の治療を週4回か5回の頻度で定期的に行うものです。精神分析的心理療法は、週1回から3回の治療となり、カウチもしくは椅子に座った対面式の設定で行います。 時間はかかりますが、こうして得られたこころの変化や成長は治療後も続く力強い変化となり得るのです。

精神分析的心理療法は、こころの変化を目指したいというモチベーションがあれば、多くの方にお役に立てますが、中には不向きな方や、症状が強いためタイミングとしては適さない方もいらっしゃいます。そのため治療を始める前に予備面接を数回行い、治療に入るかどうかの判断をしていきます。